(SE)波の音。ザザー。ザザー。以後、オープニングまで薄く続く。
OP前セリフ
皆本大祐「ぼくは、夏になるたびカマクラを想いだす……」
タイトルNA(朝比奈響子)インタラクティブドラマ

第7話「ぼくを愛した教官」(後編)

オープニングBGM

(SE)足利シスターズが、映写室でモニターをチェックしている。
足利ユウコ「ではさっそく、わが足利グループのシークレットサービス、 「足利CIA」が収集してきた貴重な映像を上映するわ。
はじめていいかしら?」
足利リョウコ、カコ「はい!」
足利ユウコ「山名!お願い!」
山名「はい!お嬢さま!」
(SE)電動スクリーンが天井から降りてくる音。ウイイイン! プロジェクタが映像出力開始。カシャ!ジイイイイイ。

(第2話より)
北条由里「いい?踏切にさしかかったら、停止線の前で必ず一時停止すること。
前方の交通状況に問題がなければ、ウィンドウを10センチ以上開けて、かつ、 首をふって左右を確認、
直接自分の目と耳で電車が接近していないことを確かめるの。
それから、ゆっくり踏み切りに入るんだけど、踏切内では、エンストしないようにアクセルを少し強めに踏んで、
ギアチェンジはせずに通過する。以上!わかった?」
(適当なところでFOしてください)
(モニターをチェックしながらユウコがしゃべります。以下、パターン同じ)

ユウコ「よく見て!これが北条由里!今回の標的であるカマクラ自動車教習所の カリスマ教官との異名を取る、
人気ナンバーワンの女性教習指導員よ。 国際A級ライセンスを取得してる。経歴に少し謎があるわね」
リョウコ・カコ「なぞー?」

(第1話より)
梶原理恵「(明るく愛想よく)あ、ご入学をご希望ですね。ありがとうございまーす!
さっそくこの用紙に必要事項をご記入していただけますか?
はーい、それじゃ、登録の手続きをいたしますので、お名前をお呼びしますまで、しばらくあちらお席でお待ちください!」
(適当なところでFOしてください)
ユウコ「そして、これが梶原理恵!まだ、現役の女子高生で、受付のアルバイトを担当 しているだけなのに、
すでに、教習生の間で人気急上昇中。彼女も適格年齢に達すれば、教習指導員になるつもりらしいわ。
特技は、イラストレーション」
リョウコ・カコ「イラストー?」

(第4話より)
朝比奈響子「この時間の学科の教習を担当します朝比奈響子といいます。 よろしくお願いします。
さ、それではさっそく教本の90ページを開いてくださ い。
今日は、第1段階パート14『標識・標示に従った走行』です。
このパートではみなさんが車を運転するときに非常に重要な標識や標示について学習します。しっかりと覚えてください」
(適当なところでFOしてください)
ユウコ「最後に、朝比奈響子!カマクラ教習所の現所長。彼女が高校生のときに、
父親の朝比奈健吾を交通事故で失ったため、 この若さで所長に就任したの。
自動車の運転技能も優れているけれど、道路交通法に関する正確な知識や、完成された人格が、教習生の信頼を集めているわ。
彼女は、敵に回したくないわね」
リョウコ・カコ「彼女―?」
カコ「(ぼそぼそ)ね、リョウコねえちゃん、反応するとこちょっと変じゃない?」
リョウコ「(ぼそぼそ)そうかな?じゃ (ふたり)せーの!」
リョウコ・カコ「敵―?」

(SE)電動スクリーン上がる。ウイイイン。歩きながらカーテンを開く音。シャーッ!
ユウコ「山名!車の準備は?」
山名「はい、お嬢さま!いつでもご出発できます!」
ユウコ「ありがとう」

(SE)三人、歩きながら外に出る。ヒールの音。駐車場に向かい。車に乗り込む。
ユウコ「カマクラ自動車教習所は、このほかにも、美しくて優秀な女性教習指導員、 そして、ダンディで経験豊富な
男性技能検定員にも数多く恵まれているわ。
これだけの人材を揃えられたのは、朝比奈響子の父親が極めて偉大な人物だったことをうかがわせるわね」
足利カコ「でも、もうこの世にいないんでしょ?」
ユウコ「そう。響子の祖父の源太郎は、初代カマクラ自動車教習所のオーナー兼所長で、
所長を引退してからは優秀な息子、つまり朝比奈健吾に後を継いでもらった わけね。
しかし、彼が急逝したために、再び所長に復帰したの。響子が所長に なるまでのピンチヒッターということだったらしいんだけど」
カコ「ふーん。そして、今は、響子が所長になったってことだね」
ユウコ「そういうことね」
リョウコ「で、今回はどんな作戦で行くの?」
ユウコ「しばらく旅に出ていた朝比奈源太郎がカマクラに戻ってきてるらしいの。
彼は、若いころたいへんなプレイボーイだったという噂があるから」
リョウコ「ターゲットは源太郎ね!」
ユウコ「リョウコ!カコ!そうと決まったらさっそく行きましょう!」
リョウコ、カコ「オッケー!」
(SE)走るヒールの音。コツコツコツコツコツ!ドアの開け閉めの音×3。エンジンの音。ブウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。

NA(皆本大祐)とゆーことで、ぼくと由里さんは、けんちょうじ建長寺の前で足利シスターズとたいじ対峙していたのだった。
そして、それまで彼女たちとどういう話をしていたのか、肝心の源じいはといえば。


由里「源じい!ひさしぶり!げんきしてた?」
源太郎「ど、どなたじゃな?」
由里「忘れたの?あたしよ!あ、た、し!北条由里だよ!」
源太郎「北条?わ!あの疫病神の由里か?」
皆本大祐「疫病神?」
由里「(責めるように)源じい!それどーゆー意味よー?」
源太郎「おまえがいつもくっついてたから、わしにガールフレンドができなかったの じゃ!だから、疫病神なのじゃ」
由里「だって、源じいといっしょにいたかったんだもん!」
源太郎「わしはいっしょにいたくなかったのじゃ!」
由里「(目に涙いっぱい)なんでよー?」

(SE)近づいてくるヒールの音×3。コツコツコツコツコツ!

ユウコ「(落ち着いてる)仲間割れは、後でゆっくりやっていただきたいわね」
源太郎「おお!美しいのー。足利ユウコちゃんじゃ!」
リョウコ「早く所長の朝比奈響子に合わせなさいよ!」
源太郎「おお!色っぽいのー足利リョウコちゃんじゃ!」
大祐「あのー。カマクラ自動車教習所が、足利自動車グループの傘下に入るって 本当なんですか?」
カコ「たった今、オーナーの朝比奈源太郎と話をつけたんだよ。 所長とタイマン勝負して勝ったら、
カマクラ自動車教習所は足利自動車グループの傘下に入ることになったのさ!」
由里「なんですって?」
源太郎「おお!かわいいのー足利カコちゃんじゃ!」
リョウコ「あたしたちと勝負するなんてねえ。もう看板架け替える準備したほうが いいね。あっははははは!」
由里「(責めるように)源じい!」
源太郎「(うろたえ)な、なんじゃ?」
由里「今の話、本当?」
源太郎「やむを得んのじゃ。昨今の景気では、教習所の経営も苦しいしの。
いっそのこと、足利グループの傘下に入ったほうが気が楽かもしれんし。 最近はやりのМ&Aじゃよ!
(独白)本当はユウコちゃんたちと一緒に行く、なすしお那須塩ばらおんせん原温泉混浴ツアーの キップをもろうたんじゃが、
口が裂けてもそんなことは言えんしの。 ほほほほ(公家笑い)」
由里「(怒ってる)なっにーーー?そのこと、響子に相談したの?」
源太郎「じゃから響子と勝負して勝ったら、という条件をつけたのじゃ!
わしが教えた 響子が足利シスターズなんぞに負けるはずがなかろうて。
じゃが、もし万が一、負けるようなことがあれば、それも運命じゃての。
(独白)那須塩原温泉混浴ツアーのキップは、勝敗に関係なく有効なのじゃ。
ユウコちゃんだけに有効!なんちての。ほほほほ(公家笑い)」

ユウコ「どう?北条さん、わたしたちと朝比奈源太郎との間で契約が成立したこと、 お認めになったかしら?」
由里「わかったわ!でも、響子が出るまでもないね!あたしが受けて立つ!」
大祐「ゆ、由里さん」
足利ユウコ「あなたが?オーナー?彼女でもいいのかしら?」
源太郎「いいじゃろ。由里もわしの運転道を極めたかわいい弟子じゃからの!」
由里「ありがと!源じい!」
ユウコ「じゃ、こっちはリョウコがお相手させていただくわ。いい?リョウコ?」
リョウコ「いつでもオッケーよ!」
ユウコ「勝負の方法は、ここ建長寺前から、鶴岡八幡宮に二のとりい鳥居までのタイマンレース。
八幡宮正面に向かって左の狛犬に、一瞬でも早くタッチしたほうが勝ち。 リョウコは、そこに停まってる赤いBMWだけど、
あなたはそのバイクでいい?」
由里「いいよ」
ユウコ「ルール無用。どんな手段を使ってもOKだけど、ひとつだけ。道路交通法 は、きっちり遵守すること。いい?」
由里「わかったわ」
リョウコ「あんたなんかに負けないよ!」
カコ「リョウコねえちゃんが負けるはずないよ!」
ユウコ「じゃ、さっそく始めましょう」
(SE)ヒールの音。三人がBMWに乗り込む。ドアを開く音、閉める音×3回。 さらに続けて1回。
(実は、源太郎もBMWに乗り込みます)

大祐「な、なんかとんでもないことになってきた」

NA(皆本大祐)そうして、由里さんと足利リョウコのタイマン勝負が始まった。

(SE)車とバイクのエンジンの音。ブルルルルルン!バオオオオオオン!
由里「(静かに意を決した雰囲気)皆本くん、行くよ」
大祐「え?ぼくも乗るんですか」
由里「あたりまえじゃない?このレースが終わったらデートの続きするんだからさ!」
大祐「え?あ、は、はい。そうですね」
カコ「(遠いので、声張り気味)準備いい?じゃ、カウントダウンするよ!
(SE)F1のスタート時の、ピ、ピ、ピ、(に合わせて)スリー、トゥー、 ワン、ゴー!」

(SE)キュキュキュキュキュー-!ブオオオオオン!バオオオオオオオン!

NA(大祐)両者スタートはほぼ同時。ならば、小回りの効くバイクが断然有利かと思われた。しかし。
(SE)以後、バイクの走る音。
(以下のバイク上での大祐と由里の会話は、声を張り気味にお願いします)
大祐「ねえ!由里さん!どうして前に出ないんですか?あのビーエムBMWに、どんどん離され てますけど」
(SE)バオオオン!キュキュキュキュキュー!×3回ほどバイクと車の幅寄せ。
由里「さっきから出ようとしてるんだけど。なんかおかしいの。 前の車に幅寄せされてるみたい!」
大祐「ええっ?」
(SE)走るBMWの車中。カットイン。
カコ「(殺した笑い)ククク。あいつらバッカだねえ!絶対に勝てるはずがないのにね!」
ユウコ「(余裕)今日は、足利グループ総動員で、カマクラ街道を押さえたからね」
(SE)走る由里のバイク。バオオオオオン!

大祐「由里さん、変だと思いませんか、前を走ってる車」
由里「なに?」
大祐「何台も続いて、みんな『とちぎナンバー』なんですけど」
由里「あれ?ほんとだ」
大祐「わわ!」
由里「なによー?」
大祐「後ろの車も『とちぎナンバー』です!」
由里「カマクラで『栃木県民まつり』でもあるのかな?」
大祐「あのー。ボケてる場合じゃないと思うんですけど。 足利市って、『とちぎナンバー』で登録されるんじゃなかったでしたっけ?」
由里「そーねー。確か」
大祐「だから由里さん?ほら『とちぎナンバー』の車に取り囲まれてるってゆーことは?」
由里「(状況察知)ああああ!まわりの車、みんなグルだあ!卑怯ものーっ!」
大祐「今ごろ気づいても、遅いですよ由里さん!ルール無用の条件、呑んじゃった じゃないですか」
由里「皆本くーん?どうしよう?」
大祐「ね、由里さん、近くに迂回路とかないですか?」
由里「迂回路、迂回路。あ、そうだ!」

(SE)バイクの急ブレーキ。キキキキキー!。

大祐「うわーっ」
(SE)ムギュッ!
由里「あ!まーたやっちゃったー。ごめんね!」
(SE)ミンミンゼミの声。
大祐「あー幸せ。セミみたいにこうしてずーっと由里さんの背中に止まって」
由里「あのねー。あとでゆーっくり止まらしたげるからさー。今は、勝負のまっ最中 なんだからね!」
大祐「ぼ、ぼくはいったい何を。そ、そんなことより、反対車線に入ったってこと は。北カマに戻るんですか?」
由里「ちがうよ!カマクラって、ほら、山に囲まれた地形してるじゃない?」
大祐「あ、それ日本史の教科書に書いてありました。 頼朝が幕府を築く際に、外敵の侵入を防げる地形を選んだって」
由里「そう!そしてカマクラの中心部に入るために、古来から山を越えて行くきりどおし切通しと 呼ばれる七つの道が切り開かれていたの!」
大祐「きりどおし?」
由里「そう!カマクラしちこう七口とも言うわ。いま現在でもそのいくつかは残ってるんだけど。
そのうちのひとつが少し戻ったところにあるの」
(SE)バイク減速。キキーッ。ゆっくり停まる。キッ。
由里「ほら!ここだよ!
(SE)ジングル。
史跡、かめがやつざか亀が谷坂切通し!」
大祐「(つぶやくように)すっごい急坂!古来からのカマクラへの入り口かあ。 わ、進入禁止の標識!
いや待てよ。補助標識が二輪・軽車両を除く か。オッケーです!由里さん!」
由里「皆本くん、学んだね!それじゃ、いっくよー!」
大祐「はい!」
(SE)バオオオン!由里、エンジンの回転を上げて、クラッチを一気につなぐ。 ブイイイイイイイン!

(SE)BMWの車中。
カコ「あいつら、もう見えなくなっちゃったよ。あきらめちゃったかな?」
ユウコ「カコ、安心するのはまだ早いわ。勝負は結果が出るまではわからないもの よ。
だから、リョウコ、最後まで気を抜かないで!」
リョウコ「はい!おねえさま!」
(SE)BMWが走る。ブウウウウ!

由里たちのバイクの音。ブイイイイイイイン!
(以下のバイク上での大祐と由里の会話は、声を張り気味にお願いします)

由里「この坂を降りたら、岩船地蔵を右に折れて、横須賀線のガードをくぐるでしょ。
それから線路と並行して少し走って、寿福寺の前で左折、踏切を渡って、 そのまま道なりに進めば八幡宮の正面に出るわ」
(SE)小鳥のさえずり。ミンミンゼミの声。夏休みの雰囲気。そよ風。
大祐「なんかのどかでいいところですね」
由里「ね!いいとこだよねカマクラって?」
大祐「ええ!以前にも増してカマクラが好きになってきました!」
由里「デートの続き、絶対するんだからね!」
大祐「そ、そうですね!」
由里「(決意)そのためにも勝たないとね!」

(SE)BMWの車中。
カコ「八幡宮が見えてきた。あと少しだね、リョウコねえちゃん!」
リョウコ「(自信満々)そうだね、カリスマ教官北条由里か!へっ、口ほどにもない!」
(SE)ケータイの着メロ。ベートーベン第九。
ユウコ「もしもし?山名?どうした?なに?亀が谷坂で見失った?ちいっ!」
カコ「どうしたの、ユウコねえちゃん?」
ユウコ「あいつら迂回路に入ったらしい」
リョウコ・カコ「え?」
(SE)由里のバイクが走る。ブイイイイイイイン!そして止まる。キキキッ!由里がバイザーを持ち上げる音。カシャ!
由里「やっと八幡宮前の交差点だ。踏み切りで少し時間をロスしたね。 見える?赤いBMW!」
大祐「えーっと。あ、見えた!100メートルくらい先だけど。 渋滞にはまってる」
由里「後ろから追い越そうとしても、まあた、邪魔されるだけだね! ちょっと、ごめんね。(力入る)いよいしょっとー!」
(SE)バイクのスタンドを立てる音。ガチャコン! (SE)大祐と由里、話しながらヘルメットを外す。

大祐「ゆ、由里さん、バイク止めてどうするんですか?」
由里「八幡宮の参道、若宮大路は、両側に車道、中央がだんかずら段葛っていう一段高い歩道に なってるでしょ?」
大祐「え?ええ」
由里「だから、ここで待ってて!あと400メートルくらいだから、あたし走る! 中央突破よー!」
(SE)信号青に。『通りゃんせ』のBGMが鳴り響く。
由里「じゃ、行ってくるね!」
(SE)由里走る音。タッタッタッタ!(今日の由里は、スニーカーを履いてます)
大祐「ゆ、由里さん!ぼくも行きます!」
(SE)大祐の走る音。タッタッタッタ!

(SE)BMWの車中。
リョウコ「渋滞でなっかなか進まないねー。うー、いらいらするー」
カコ「でも、うちの組織力は、ハンパじゃないからね!絶対に追いついて来れないよ! (殺した笑い)クッククク」
ユウコ「カコ!そうでもなさそうよ。ごらんなさい!」
リョウコ・カコ「え?」
ユウコ「ほら、段葛を走ってるあのふたり」
カコ「あああああ!」
ユウコ「リョウコ!あなたも車を降りて走りなさい!わたしが運転代わるから」
リョウコ「はい!おねえさま!」
カコ「リョウコねえちゃん、元陸上部だからね。ダッシュじゃ負けないよー」
(SE)車が止まる。キキキッ!ドアが開く、閉まる。ガチャ!バム!走るリョウコの足音。(こちらはヒールです)コツコツコツコツ!

(SE)ふたりが走る足音。タッタッッタッタ! 以下は、走りながら話しますので、息を切らす演技をお願いします。
由里「はあはあ!あと100メートル!はあはあ!だんだんきつくなってきた。 もう300メートル以上走ってるからなあー」
大祐「はあはあ!わわ!」
由里「はあはあ!ど、どうしたの?」
大祐「足利リョウコが降りてきた!はあはあ!」
由里「はあはあ!最後は、ダッシュの勝負ね!」
大祐「ゆ、由里さん、足利リョウコ、向こうの歩道走ってます!足、速いです!」
由里「うえー。もうこれ以上早く走れないよー」
大祐「由里さん、がんばってください!はあはあ」
由里「こんなことなら走りこんでおけばよかったー!はあはあ!」
(SE)リョウコの走る音。コツコツコツコツ!
リョウコ「足の速さなら負けないよー」
大祐「由里さん!このままだと勝てない!」
由里「はあはあ!ぐるじー」
大祐「あと30メートルです!がんばって!はあはあ」
(SE)BMWの車中。

カコ「リョウコねえちゃん!がんばれ!」
ユウコ「(落ち着いてる)勝敗は最後の5メートルまでもつれそうね」
(SE)リョウコの走る音。コツコツコツコツ!
リョウコ「この勝負いただいたわね!」
大祐「あと15メートルです!由里さん!はあはあ」
由里「も、もーダメ。はあはあ」
(SE)走る足音がだんだんゆっくりになる。
大祐「ゆ、由里さん!失礼します!はあはあ」
(SE)大祐、由里を両手で抱えて走り出す。ガバアッ!
由里「キャッ!み、皆本くん!なにするの?」
大祐「この勝負、負けるわけにいかないんです!う、うおおおおおおお!」
ここ、サウンドをスローにして緊迫感の演出できますでしょうか?
(SE)大祐、最後の力を振り絞って、力強く走り出す。ダッダッダッダッ! リョウコの走る足音。コツコツコツコツ!
リョウコ「そ、そんなバカな?」
大祐「あと5メートル!」
(SE)リョウコの走る足音。コツコツコツコツ!(もう近くにいます)
リョウコ「わ、わたしが、負ける?」
大祐「(苦しそうに)由里さん、て、手を伸ばして」
(SE)タッチ!大祐そのまま倒れこむ。バタッ!
大祐「(ただ激しい息遣い)はあはあはあはあはあはあはあ」
由里「み、皆本くん!か、勝ったわあ、ありがとう。はあはあはあ」
(SE)リョウコ、その場に立ち尽くす。ヒールの音、2歩くらい。コツコツ。
リョウコ「ま、負けるなんて初めて」
(SE)背後で車の止まる音。キキキーッ。ドアの開く音閉まる音。ユウコ、カコが近づいてくる足音。コツコツコツコツ!
カコ「リョウコねえちゃんが負けるなんて!」
ユウコ「北条さん?なかなかやるわねえ。今回はわたしたちの負けを認めるわ。
けど、諦めたわけじゃないからね。 また会える日を楽しみにしてるわ!行きましょう、リョウコ!」
リョウコ「は、はい!おねえさま!」
(SE)三人車に戻る。コツコツコツコツ!車のドア開く音、閉まる音×3。 そしてBMWが走り去る音。ブウウウウウウ!

(エンディングBGM)
入れ替わりで、源太郎の近づくサンダルのような足音。ザッザッザッ。

朝比奈源太郎「ようがんばったの!ま、わしも北条由里が負けることはありえんと 思っとったからの。
それから、皆本大祐といったかの?なかなかみどころのある若い衆じゃ! また、会おうの」
由里「源じい」
(SE)朝比奈源太郎が立ち去る足音。ザッザッザッ。
由里「ね、皆本くん、大丈夫?でも、皆本くん、いきなりあたしを 抱えて走り出すんだもん!びっくりしたよー」
大祐「はあはあはあはあ。ゆ、由里さんの背中、はあはあ、し、幸せです。はあはあ」
(SE)由里が大祐をどつく音。ガツン!
大祐「いで!はあはあはあはあ」
由里「皆本くん、セミになりたいんだよね(気持ちよさそうな笑い)あはははは!」
大祐「(息を切らせながらテレ笑い)あははは。はあはあ。あははは」

(BGM明けのコーダ) 若宮大路を歩く二人。街の雑踏。セミの声。車の通る音。
由里「なんか、汗だくになって走りまわって、さんざんなデートになっちゃったね」
大祐「いえ、ぼくは、結構楽しかったらいいんです」
由里「今度は、もう少し落ち着いたデートしたいね?」
大祐「え?今度?ほ、本当ですか?」
由里「(少しテレ気味に)うん」

(SE)携帯の着信音。唱歌カマクラ。由里、出る。
由里「もしもし?」
朝比奈響子「(電話の声)もしもし、響子です。ねえ、おじいちゃん見つかった? 全然連絡がないからすっごく心配してるんだけど」
由里「ゲ。すっかり忘れてた」

(第7話 終わり)


【カマクラカルトクイズ7】
理恵「それでは、大変長らくお待たせいたしました!せーの!」
三人「カマクラカルトクイズー!ドンドン、パフパフー!」
理恵「うんうん、すっかりコーナーらしくなってきたね。
さて、今回のお話に登場した八幡宮の参道、若宮大路。前にも一度このカマカルでも段葛を取り上げたけど、
さてこの若宮大路は、カマクラ幕府の将軍の誕生にちなんで造営されたものだそうですが、それはいったい誰でしょう?」

由里「1番!もちろんそれは頼朝だよね!カマクラ幕府そのものをこの地に築いた偉大 な将軍だよね!」
響子「2番。それは、2代将軍頼家ね。頼朝の正室、北条政子に頼家が生まれたことが きっかけで、若宮大路が造営されたわけね」
理恵「3番、正解は3代将軍の実朝。若宮大路造営の後、彼は、頼家の息子の公暁に、 八幡宮大銀杏のそばで暗殺されてしまうのでした」


音声ドラマとシナリオは演出の都合上、一部変更されている場合があります。
(C)2000-2001 (K)

戻る