(SE)波の音。ザザー。ザザー。以後、オープニングまで薄く続く。
OP前セリフ
皆本大祐「ぼくは、夏になるたびカマクラを想いだす……」
タイトルNA(朝比奈響子)インタラクティブドラマ
第1話 カマクラより愛をこめて
オープニングBGM
NA(皆本大祐)
大学に入ったその夏、ぼくは引っ越したばかりのワンルームマンションからほど近いところで車(クルマ)の免許を取ろうと考えていた。
なにしろ、ちょっと足を伸ばした横浜には車でデートを楽しめるスポットがうじゃうじゃあるのだ。といっても、相手は現在募集中。正直なところ、車を手に入れることがガールフレンドを見つける近道だと、都合のいいことを考えていた。
つまりは一石二鳥の野望。
日差しの強いその8月の朝、マンションを出るときに、集合ポストで発見した自動車教習所のチラシがすべての始まりだった。
(SE)集合ポストのドアを開く音。キイ。手を伸ばして、チラシを取り出す音。
ガサガサ。
皆本大祐「(独白)げ!なんだこの下手なイラスト!」
『(梶原理恵の声)なんと20万円ポッキリで普通免許証が取れる!超スピード教習!
カマクラ自動車教習所』
NA(皆本大祐)
チラシのコピーはそれだけ。そしてフリーダイヤルに最寄りのモノレール駅からの地図。
あと、特徴のない箱にタイヤらしきものがついているだけの車。
車のフロントガラスにはウインクしている大きな目が書き込んであり、ご丁寧にその車は思いっきり、ブイサインを出していた。
そして、なぜか車のまわりには、たくさんの花とハート。
どんなイラストか想像がついただろうか?
でも、ぼくの目はその価格にクギ付けになった。
なにしろ仕送り頼みの、ひとり暮らしの学生には、お金の余裕はまったくなかったのだ。
(SE)ミンミンゼミの声。昼間の街の雑踏ノイズ。車の通り過ぎる音。などなど。
スニーカーの足音。自動ドア開き、閉まる。足音、しばらくして止まる。
皆本大祐「あのー、このチラシ見て来たんですけれども……」
梶原理恵「(明るく愛想よく)あ、ご入学をご希望ですね。ありがとうございまーす!
さっそくこの用紙に必要事項をご記入していただけますか?」
大祐「(独白)可愛いコだなあ。こんなコがガールフレンドだったら最高だよな!」
(SE)ボールペンで文字を書く音。
大祐「はい、書きました」
理恵「はーい、それじゃ、登録の手続きをいたしますので、お名前をお呼びしますまで、
しばらくあちらのお席でお待ちください!」
大祐「はい。(独白)なんかよさそうな教習所だな。しかも安いし、これは当たりかも♪」
(SE)ツカツカツカ!反対側からリズミカルなヒールの音。自動ドア開き、足音止まる。
北条由里「あ、きみ!こっち、こっち!」
大祐「え?ぼ、ぼくのこと?」
由里「……ほかに誰かいる?よそ見してると事故るよ」
大祐「あ、はいすみません。(独白)うわーきれいなひと、それに足ほそー!カモシカ
みたいってこういうの言うんだよなー。……事務員の方かな?」
由里「わたし、教官室からチェックシート取ってくるから、先に乗ってて!」
大祐「は?」
由里「もたもたしてないで、早く!」
大祐「あ、あのー、あなたは?」
由里「わたしは、北条由里。あなた、教習生でしょ?」
大祐「え、ええまあ。さっき入学要項記入したばかりですけど……皆本大祐です」
由里「皆本くんね。よろしく……」
大祐「北条さん、教官の方ですか?」
由里「(軽い)そよ。それがなにか?」
大祐「い、いえ別に……(独白)すっごい美人の教官だ。ラッキー!
ここにしてよかったー!」
由里「……じゃ先に車で……あ、そうか。号車番号わからないよねえ。7号車よ!
じゃ、あとでね!」
(SE)ツカツカツカ!自動ドア開く、閉まる。
大祐「安全確認の教習でもするのかな……?ま、いいや。7号車ね」
(SE)自動ドア開く音。大祐、教習所の建物から外へ。風の音。ミンミンゼミ。
大祐「なんか、わくわくするなー。7号車、7号車……と。あ、あった」
(SE)走ってくる足音。タッタッタッタ。大祐の背後で自動ドア開く。
梶原理恵「……皆本さーん。どうしたんですか?教習生の登録……」
大祐「あ、受付の……」
理恵「梶原理恵です」
大祐「……あ、梶原さん……さっき待合室で、北条さんっていう教官の方に呼ばれて、
7号車で待つようにって」
理恵「……由里に?(ちょっと含みがある笑い)くすくす。そう。じゃ、いいわ。
登録済ましといたから、教習終わったら、受付に来てね!」
大祐「はい、わかりました」
理恵「……じゃ、あとで。くすくす」
(SE)走り去る音。タッタッタ。
大祐「(独白)梶原理恵ちゃんか……可愛いなあ。北条さんといい、この教習所、ほんと
美人ばかりだー……でも彼女、なにか笑ってたような……」
(SE)ヒールの音。コツコツコツ!
由里「(声明るい・何か食べている)はーい、お待たせ。じゃ、皆本くん。乗って!」
大祐「の、乗るんですか?」
(SE)紙袋の音ガサガサ。
由里「(食べながら)そう。車に乗りに来たんでしょ?」
大祐「そ、それはそうですけど。……なに食べてるんです?」
(SE)紙袋の音ガサガサ。
由里「(食べながら)ロスバーガーのテリヤキ。ここんとこ忙しくてさー」
大祐「(独白)だ、大丈夫なのかな……」
由里「(食べながら)ん?なんか言った?」
大祐「い、いえ。あの……安全確認とかしないんですか」
由里「(食べながら)したければどうぞ。わたし先に乗ってるからね」
(SE)車のドアを開ける音、閉める音。ガチャ、バム!
大祐「あ、あのー。やりかたとか教えてくれないんですか?」
由里「(食べながら)そういうことはね、実地試験の前に集中してやればいいの。さ、
皆本くん、早く。時間、もったいないよ!」
大祐「わ、わかりました。乗ればいいんですね」
NA(皆本大祐)
ぼくは、北条教官に言われるままに運転席に乗り込んだ。それにしても、さっき入学を申し込んだばかりなのに、その場で車に乗せられることになるとは思わなかった。
由里「はい!車に乗るときは腰からね!シートには深くかけて、正しい運転姿勢を保て
るようにシートの位置を調整するの!姿勢が決まったらミラー合わせて!」
大祐「あ、あのー」
由里「それじゃ、エンジンかけて!しゅっぱーつ!」
大祐「あの、出発って……」
由里「あ、しっかり前見てなきゃダメよ」
大祐「どうやってエンジンかけるんですか?」
由里「あのねえ。そんなことも知らないで車に乗ってるの?」
大祐「だって、ぼく、車の運転なんてしたことないから……」
由里「へ?あなたいくつ」
大祐「……十九」
由里「……十九にもなって、車の運転したことないの?」
大祐「(少しいらいら)……だから教習所に来てるんじゃないですか!」
由里「(ちょっと考えてごまかし笑い)んと。……あははは。そ、そうよねえ。ごめんね。
わたし、さっきから小町通(こまちどおり)のブティックでみつけた可愛い服のことがずーっと気になっててさあ……。売れちゃうんじゃないかって」
大祐「話そらしてません?北条さん、教官なんでしょ!頼みますよー」
由里「あ、由里でいいよ。ほとんど歳変わらないし……大学生でしょ?」
大祐「へ?北条さんいくつなの?」
由里「だから、由里でいいってば!……でも歳は秘密だよ」
大祐「なんていうか……すごく大人っぽいですね……(少し照れ)由里……さん?」
由里「ありがと。(急に元気)さあて、どこ行こか?」
大祐「あのー。どこ行こうとか考える前に、やるべきことがたっくさんあるような気が
するんですけど……」
由里「えっと。……エンジンね。ハンドルの右にキーがささってるでしょ。キーは、
ひねると左から、ロック、アクセサリ、スイッチオン、エンジンスタートの順に入るようになってるから……」
大祐「ふんふん、このキーですね……」
由里「あ、待って。エンジンをかけるときは、クラッチペダルとブレーキペダルを両方
踏んで、ハンドブレーキを引いて、チェンジレバーがニュートラルに入ってることを確かめて、それから、エンジンキーをゆっくり右に一段ずつ回すの!」
大祐「え?クラッチってどれですか?」
由里「あなたクラッチも知ら……本当に初めて乗るの?」
大祐「(ぶぜん)教官に嘘ついてどうするんですか?」
由里「あははは。ごめんねー。……わたし、免許取る前にもう車の運転カンペキだった
からなー」
大祐「え?車って免許持ってないと乗れないんじゃ……」
由里「車っていってもカートだけどね。子供のころ何度もカートレースで優勝したこと
あるんだ。カートだって、原理は車となにも変わらないし……」
大祐「(独白)どーせ、ぼくは、ゲーセンのレプリカにしか乗ったことないしな……。
あ、そうだ!じゃ、せめて由里さんの模範運転見せてくださいよ!」
由里「そんな時間ないよ」
大祐「(懇願)そう言わずにお願いします!」
由里「後悔しない?」
大祐「(怪訝)後悔?どうしてですか?」
由里「なんとなく……ね」
大祐「教官に模範運転教えてもらうんです。後悔なんて……」
由里「……シートベルト締めてるね?時間ないから、急ぐよ!」
大祐「あ、あの座席代わらないと……」
(SE)超過激なエンジン音。ブワオーン!(以後、クラッチつながるまでどんどん
大きく高音になってゆく。オォォォォォォォン!)
由里「……ほら!この車はね助手席にもハンドルとアクセルとブレーキと……運転する
のに必要なパーツはみんなついてるの!」
大祐「(びっくり)ほ、ほんとだ!」
由里「しっかりつかまって!5000回転からクラッチミートするからね!」
大祐「え?」
由里「ふふふ。……この瞬間がたまらないのよねー!」
(SE)タコメータ振り切ってクラッチつながる。ドンッ!タイヤ悲鳴をあげて回転し
ながら、急加速発進。キュキュキュキュキューッ!
大祐「うわーーーーーーーーーっ(この声、車の振動で震えてます)」
(SE)間もなくカーブにさしかかる。ブレーキの音。キューッ。キュキュキュ。すか
さずエンジンの音。ブワオォォォォーン!すぐブレーキ。キュキュキュキュ。またエンジン音。ブワオォォォォーン!しばらく加速して、またブレーキ。キュキュキュキュ。ブーッ、ガックン。と止まる。あっという間にコース一週。大祐その間ずっと「わわわわわわ」絶叫マシンに乗っているイメージ。
由里「はい到着。今日は、けっこういいラップ刻んだかな……」
大祐「(乾いた笑い)は、ははは」
由里「さ、わかったでしょ。やってみて♪」
NA(皆本大祐)
(ためらいがちに)え、えーと。そしてぼくは、クラッチやらチェンジレバーやら、生まれて初めて触る車のパーツの仕組みをひと通り教わって、30メートルばかり走行することができた。
経験したひとならわかってくれると思う。実は、すっごくうれしかったんた。
由里「皆本くん、スジいいよ」
大祐「本当?ありがとう」
由里「その調子ね。じゃ、どこ行く?」
大祐「行くって……教習所のコース回るんじゃ……」
由里「コース回ってもつまんないじゃん。カマクラの駅の方に行こうよ!」
大祐「あのー、ぼくまだ車に乗って1時間も経ってないんですけど……」
由里「だから?」
大祐「仮免許って言うんでしたっけ、それ取らないと路上教習できないって聞いたこと
あるんですけど……」
由里「いーじゃん。男だろ!細かいこと言わないの!」
大祐「……細かいことなのかなー?だいいち、そんなこと教官が言っていいんですか?」
由里「どして?ダメ?」
大祐「……ええと、あ、そうだ、道路交通法違反じゃないんですか?」
由里「よく知ってるねー。でもだいじょうぶ。この車、助手席でも運転できるじゃない」
大祐「は?」
由里「だからさ。わたしが左ハンドルの車、運転してることにしちゃえば、問題ない
わけ」
大祐「なるほどー。(独白)……ってそういう問題かなー」
由里「はい!わかったら、さっさと行くよ!」
大祐「う、うん。わかった。ええと、半クラッチっていうんだっけ……クラッチをゆっ
くりつなぐんですよね」
由里「そ。慌てるとエンストするからね」
(SE)徐々に車スタートする。エンジンの音徐々に大きく。
大祐「……ゆっくりゆっくり、やったー。つながったー」
由里「そんなんで喜んでないで、早く!」
大祐「わ、わかってますよ。ええと、少しアクセル踏んで、速度が20キロくらいに
なったら、クラッチをいったん切って、ギアをセカンドに入れて……と」
由里「ほら前見て、前。もう出口だよ。一時停止ね」
大祐「あ、もう止めるのか。ええとブレーキ踏んで減速して、クラッチを切って、完全
に停止するまでゆっくりブレーキを何度かに分けて踏んで……」
由里「あっはははー」
大祐「な、なにがおかしいんですか?よし止まった。ハンドブレーキを引いて、と。」
由里「皆本くん、自分のやること、全部口に出して言わなくてもいいんだよ」
大祐「え?あ、そうか。でもなんか口で言わないと自然にできないんですよ」
由里「それに、身体はガッチガチだし。チェンジレバーばっか見てて、進行方向
ぜんぜん見てないよ。それじゃ、実地試験で減点だな」
大祐「え?そんなに固い?前見てない?」
由里「うん。先がめっちゃ思いやられる」
大祐「でもさっきスジいいって……」
由里「初めてにしてはね。でも、駅まで無事にたどりつけるか心配になってきた」
大祐「(懇願口調)ですから。普通は、コースで技能教習を受けて、第1段階を修了して、
仮免許を取得してから路上教習に進むんじゃないんですかー?」
由里「皆本くん、知識はあるみたいだけど……ひとと同じことやったって、ダメだよ。
自分のやりかたを工夫していろいろ発見があって初めて上達するんだから、
これ、わたしの基本ルールその1だよ」
大祐「(独白)ひとなみに、免許取りたいだけなんだけどなー」
由里「(詰問口調)なにか言った?」
大祐「い、いえなにも……ええと、それじゃ、路上に出ますよ。本当にいいんですか?」
由里「……もたもたしてるとどんどん時間、なくなるよ」
大祐「わ、わかりましたー」
NA(皆本大祐) そしてぼくは、他の車にクラクションをブーブーならされて、何度かエンストしながら、それでもようやく湘南モノレールの高架下までやってきた。
(SE)走行する車のエンジンの音。以後薄く続く。
由里「(やれやれという感じ)やっと深沢(ふかざわ)ね。このまままっすぐ行って、 大仏トンネルくぐって、長谷観音前で左折ね」
大祐「は、はい、がんばります」
由里「ところで……皆本くんって、最近、カマクラに引っ越してきたんだよね?」
大祐「ど、どうして知ってるんですか?」
由里「さっき、理恵に聞いたから。あ、受付の子、梶原理恵っていうんだけど……」
大祐「ああ、住民票出したからですね」
由里「どうしてカマクラに住むことにしたの?」
大祐「大学が横浜にあるんですけど……なんか、カマクラって好きなんです。中学生の
とき、一度、課外授業でカマクラに来たことがあったんですけど……それ以来とても気に入ったんです」
由里「ふーん。カマクラが好きなんだ」
大祐「うん」
由里「どのくらい好き?」
大祐「どのくらいって……面白いこと聞くんですね」
由里「重要なことだよ」
大祐「ふーん。かなり好きですよ。住んでみてもっと好きになれそうだと思った」
由里「一生住んでもいいくらい?」
大祐「え?一生?……って、由里さんは、一生カマクラにいるつもり?」
由里「わたしは、わたしの子供も孫も、わたしの力が及ぶ限りはカマクラに住まわせる
からね!」
大祐「ふーん。すごい決心なんですね……。お、そろそろ長谷観音前だ。ここで左折
ですよね」
由里「……(決意)わたし、カマクラ市の市長になるんだから」
大祐「ふーん、市長ね。ええと、ブレーキ踏んで減速して、クラッチを切って、も一度
ギアをセコンドに戻して……、えー?いまなんて言った?」
由里「ふふふ。皆本くん、いい間(ま)じゃない!」
大祐「ありがと!ここで、ギャグの続き、聞きたいとこなんですけど、今、ギアチェン
ジに集中してるからね。わるいけど、ぼくにはそんな余裕がないんです」
由里「あ、長谷(はせ)じゃない、止まって!」
大祐「え?左折するんじゃ……」
由里「いいから止まって!」
(SE)車の激しいブレーキ。キッキーー!
大祐「うわーっ」
(SE)長く引くブレーキ音。キーーー。ガックンと激しいショックがあって車止まる。
大祐「……(責めるように)由里さん、今、思いっきりブレーキ踏みましたよね?」
由里「エンストしたけど、ま、いいや。ねえ、小銭持ってる?」
大祐「え?小銭?」
由里「拝観料よ。ふたりでたぶん600円!まだ、長谷寺、入ったことないでしょ?」
大祐「ないですけど……。あのー、教習中に、お寺を拝観するんですか?」
由里「いいから、早く!」
大祐「わかりましたよー」
(SE)お金を手渡す音。チャリン、チャリン。
大祐「(独白)由里さんて美人だけど怖いなあ。……車、どうするんですか?」
由里「そのへんに止めて」
大祐「あのー、駐車違反なのでは……」
由里「(きっぱり)いいから、早くしないとハンコあげないよ!」
大祐「(独白)こ、怖っ!
はあい、わかりましたー」
(SE)車のドアを開ける音、閉める音。ガチャ、バム!
ミンミンゼミの声。昼間の街の雑踏ノイズ。車の通り過ぎる音。などなど。
NA(皆本大祐)
そうして、ぼくと由里さんは、拝観料を払ってふたりで長谷寺の山門をくぐった。
夏休み中ということもあって、境内には、家族連れの観光客が多かった。 が、カップルもかなり目立った。
ぼくたちも、そんな風に見えないこともないかなと思ったけど、由里さんは、おしゃれなブルーの教官服で決まっているのに、
ぼくはTシャツにGパンという、ベリーカジュアルないでたちなのが少し残念だった。
……ええと、な、なんか違うんじゃないか? あ、免許を取りたいんだよ。……本当にこの教官でだいじょうぶなのだろうか?
きれいなひとなんだけどなあ……。
由里さんは、ぼくの右手をぐいとつかんで、そのままどんどん奥に入って行く。
大祐「あ、あのー、どこに行くんですか?」
由里「上に、見晴台があるの。そこから、カマクラの街と由比ガ浜が一望に見渡せるよ!」
大祐「え?」
由里「皆本くん、カマクラ好きだって言ったよね」
大祐「ええ、まあ……」
由里「(うれしそうに)じゃ、きっと気に入るよ……」
(エンディングBGM)
NA(皆本大祐)
長い石段を上りきると、ぼくたちの前には、不意にひろびろとした空間が開けた。
そして、海風に乗った潮の香りが漂ってきた。
見渡すかぎりに、由比ガ浜に寄せる青い波。かなたにはぼんやりと三浦半島が浮かんでいる。
ぼくは、無理やり連れてこられたのに、なんだかとても晴れがましい気分になった。
由里さんの眼は、少し憂いを帯びているような気がした。
(第一話終わり)
【カマクラカルトクイズ1】
梶原理恵「(タイトルコール)さーて、唐突ですが、カマクラカルトクイズー!ドンドン、 パフパフー!
ふたりが訪れた長谷寺には、カマクラ江ノ島七福神のひとりが奉られています。さて、それは、次のうち、どれでしょうか?」
北条由里「言うまでもないことだね!1番。それは大黒さまに決まってる。五穀豊穣 だよ!」
朝比奈響子「由里!なに言ってるの?2番。恵比寿さまでしょう。海が近いんだもん、 ほら、釣りざおが似合うじゃない?」
梶原理恵「由里も響子さんもはずれ!3番。正解は、布袋さま。ふたりともまだまだカマクラを研究しないとね!」